このところネット広告関連企業の大型のM&Aが続いている。07年4月13日にGoogleがDouble Clickとの買収合意を発表して以来、AOLがAdtech、WPPが24/7 Real Media、MicrosoftがaQuantiveをお買い上げ。業界再編が続くと、あの会社は今はどこの傘下だっけ、というのが時々混乱するのでメモ替わりに。
しかし、aQuantiveに$6 billionですか...。
メディア企業が機能子会社を買収するのか、広告コングロマリットが特定領域の補完を目指すのか、立場によりその意味するところは様々ですが、経営資源として技術資産や、顧客や取引先との関係性を取得するのが目的である事は共通。この場合、経営資源としてみるべき人材は、買収後にほとんど離脱するのが通例。
とはいえ、この業界の技術資産といっても広告配信とオーダー・プロセス管理のアプリケーションそのものには、際立った技術優位だったりIT資産としての価値があるとは思われない。このような価格形成のインセンティブは、ネットワークに参画するメディア会社、ターゲティングの元となるユーザーデータ、広告主との関係性を早期に取得することと考えるべきか。
M&Aがこのタイミングで相次ぐ理由としては、業界内での競争がひと段落して残存プレーヤーの数が少なくなってきていた段階にあったことと、この種のネット広告配信事業の特質として、収穫逓増の原則が働きやすい競争環境にあることも認識しておく必要がありそうだ。
Link: 米Microsoftが米aQuantiveを買収、オンライン広告の業界再編が加速.
米Mirosoft
は5月18日(現地時間)、オンライン広告企業の米aQuantiveの買収を発表した。aQuantive株1つに対し66.50ドルが割り当てられ、
総額で約60億ドル規模の買収となる。66.50ドルは、同社株の前日17日の終値35.87ドルに約85%のボーナスを上乗せしたもの。取引は全額
キャッシュで行われる。
Link: 英WPP、米オンライン広告の24/7 Real Mediaを6億4,900万ドルで買収.
世界第2位の広告コングロマリット(複合企業)である英WPP Groupは17日、米オンライン広告大手24/7 Real
Mediaを6億4,900万ドルで買収すると発表した。
Link: 米AOL、オンライン広告の独Adtechを買収し、広告事業を強化.
米Time
Warner傘下のAmerica
Online(AOL)は16日(現地時間)、オンライン広告プラットフォーム技術を提供するドイツのベンチャー企業Adtechの過半数株式を取得した
ことを発表した。買収金額などの詳細情報は公開されていない。Adtechは今後、AOLの広告子会社であるAdvertising.comの下で独立し
た事業体として運営されるという。このところインターネット企業による広告企業の取得が続いており、AOLもこの動きにならう形となった。
Link: ITmedia News:Google、DoubleClickを約31億ドルで買収.
米Googleは4月13日、オンライン広告配信の米DoubleClickの買収で合意に達したと発表した。Googleは、DoubleClickの
出資者である投資会社Hellman & FriedmanとJMI
Equityに、約31億ドルを現金で支払う。買収取引は年末までに完了する見通し。
買収によりGoogleは、自社の広告プラットフォームやサービスとDoubleClickの広告管理技術を組み合わせ、オンライン広告用の「より優れ
たツール」を提供できるとし、パブリッシャーや広告主、代理店に加えユーザーにとっても利益となるとしている。Googleのエリック・シュミットCEO
は「DoubleClickの技術は大手広告主やパブリッシャー、代理店に広く採用されており、2社の組み合わせにより、ディスプレイ広告における
Googleの革新的な進歩(技術)の普及が加速されるだろう」とコメントしている。
ごく短期的には、所有者の変更に伴い、日本市場に対するスタンスが即座に変更されることは考えにくいが、中期的には新たな親会社の戦略に左右される場面は想像できる。AOL、独Adtechの組み合わせは日本市場ではほとんど存在感がないが、それ以外の登場人物については、日本市場に少なからぬ影響が予想されうる。
Double Clickは、97年に日本法人をJVで設立(トランスコスモス、NTT、NTTアドが出資)し、01年4月にナスダック・ジャパン(現ヘラクレス)に上場。その後、04年2月にはメディア事業を株式会社AD2(親会社のトランスコスモス子会社)に営業譲渡、技術会社としてフォーカスする事業領域を絞り込むと同時に、電通と業務・資本提携(出資比率1%と非常勤取締役の受入)を行っている。ただし、米Double Clickの持株比率は上場前の38.16%から減少し続け、05年12月に主要株主を外れて10%以下となり、06年6月提出の有価証券報告書を見ると、直近では0.5%程度の少数株主としての関係性になっていた様子なので、今回の米国Double Clickの所有者の変更が直接どのような影響をもたらすのかは不明瞭。取引契約ベースでどの程度の約束事が存在しているかに左右されるのではないか。
05年9月に24/7 Real Mediaは電通とのJVで株式会社24-7 Searchを設立し、翌年06年11月にはパートナーシップの拡大とアジア地域(中国、韓国、台湾、タイ、インド)への早期参入を促進するため、共同持株会社「電通24/7 サーチ・ホールディングス」をオランダに設立することを発表している。WPPと電通の今までの関係性を鑑みるに、こちらも先行きに不透明感は払拭できない。
aQantiveは、傘下のAvenue A | Razorfishは、電通の子会社デジタルパレットに資本参加する方式で07年2月に日本進出をしたばかり。電通から見るとパートナーシップを結んだAvenue A | Razorfishを所有する持株会社の所有者が変更になったわけなので、こちらも影響度がどの程度出てくるのかは分からない。
一般的に、外資系企業との資本提携を含む業務提携の場合には、出先の営業部門(日本法人)をJV化してある種の権益化に成功しても、後から本店を他社(特に競争関係にある会社)に買収されるリスクが残る。そもそも最初の提携時点で、所有者の変更そのものに対してリスクをヘッジする手段もしくは、日本市場に対する戦略オプションの変更に対してある種の制限を加える手段を講じておかないと、事後に打てるカウンターはほとんどない。
とはいえ、これでゲームが終わりというわけでは無い。
再編の結果、社外に流出した人材は再び起業し、やがて新たなイノベーションを起こす。長い目で見れば業界の新陳代謝のサイクルが延々と回り続けるだけだ。この次のタイミングに間違わないように、我々は何を学ぶべきなのか、これから起こる市場の変化を注視しておきたい。
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