3,000億円規模にまで成長したといわれる、ケータイ・コンテンツ市場。キャリアの公式メニューに登録されることを前提としたBtoCの直接課金のビジネス・モデルは、KDDIが開けたパンドラの箱「パケット料金定額制」と、携帯電話へのフルブラウザの搭載によって、緩やかだが確実に崩壊する方向へ向かっている。
対応端末の制限や、機能面で一長一短あったフルブラウザの製品群の中で、端末の既存のブラウザ(i-mode、EZweb、Vodafone live!)でPCサイトの閲覧を可能にする"jigブラウザWEB"の登場は、いわゆる「破壊的技術 (disruptive technology)」としてのインパクトを持つ。
今まで各キャリアの公式メニューの中での競争に終始していたモバイル・コンテンツの事業者は、いやおうなしにインターネット全体のコンテンツの競争に巻き込まれることとなる。従来、PC向けWebで無償で提供されているコンテンツ分野でも、比較的容易に有償コンテンツとしてビジネス化できていた環境は、この”jigブラウザWEB”がもたらした枠組みの変化によって失われることになる。
また、”jigブラウザWEB”は、各キャリアの持つ「コンテンツメニュー」のゲートウェイとしての機能を奪う可能性を秘めている。ユーザーの導線を考えれば、携帯電話に搭載されているブラウザのスタートページとして、いわゆるポータル機能を担う事となるからだ。各キャリアにとっては、課金決済手数料という安定した収益源が確保されていた"公式コンテンツ"への導線を中抜きされる可能性が高くなる。
ケータイ向けコンテンツという特殊だった市場が、インターネット全体のコンテンツ市場へ融合していく。その際には、PCのインターネットコンテンツの市場のビジネスモデルに追随する形で、BtoCの直接課金モデルから、BtoBtoCの広告モデルへの転換が大きな潮流となるはずである。jig.jp自身もブラウザの機能拡張と同時に、メディア的なサービスの拡張についても言及している中で、各キャリア、モバイルコンテンツの事業者、既存のインターネットメディアの主要プレーヤーが、ビジネスモデルをどのように転換していくのか?
イノベーションのジレンマを乗り越えて市場の新しいルールに適応する競争が、すでに始まっている。
Link: 「jigブラウザはPCとケータイのギャップを埋めていく」--jig.jp福野社長 - CNET Japan.
jigブラウザWEBは、jigブラウザに対応していない端末のユーザーを主な対象としている。jigブラウザはボーダフォンのVアプリやauのBREW版EZアプリに対応していないからだ。
ボーダフォンはブラウザアプリ自体を規約で禁止している。また、auのBREW版EZアプリは、KDDIに申請して認可を得てからでないとリリースできない。福野氏によれば、KDDI側からは「EZwebサイトの利用を圧迫する可能性があるという理由で許可が下りなかった」という。つまり、定額制を利用して大量のデータをやりとりされると、ほかのEZwebサイトを利用するユーザーの伝送速度が遅くなったり、つながらなくなったりする可能性があるので許可できないということだ。
これは推測だが、フルブラウザは既存の公式コンテンツプロバイダがこれまで築いてきた「月額数百円で携帯電話用サイトの利用を許可する」というビジネスモデルを壊す可能性があり、KDDIとしては公式コンテンツとしてのお墨付きを与えることはできなかったという理由も考えられる。
Link: NRIメディアフォーラム:携帯電話市場の動向〜激動の2005年、何をなすべきか?.
Link: jigブラウザWEB.

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